修司の歌物語

僕は、セールス・エンジニアの父とピアニストである母よりこの生を授かった。そしてその日から僕が右腕分娩麻痺だと伝えられたその日から母の一生分の悲しみが始まった。ピアノが弾けない我が子と心中までしようと思っていたと告白してくれたのは、しばらくたってからのことだ。僕は、まだ生まれて間もないころから両手が使えないことでピアノが弾けないことを無意識に分かっていたのだろう。別にうらやましいと思ったことが今まで一度もないのだ。そして心中をやめた母を癒したのが僕の飛び切りの笑顔だった。ただ、最近、人生を終えるまでに、リストのあの曲弾いてみた意欲も湧いていてきた(舘野泉さんよろしくお願いします)。でもまず始めるのは、シューマンの『詩人の恋』であるだろう。Im wunderschonen Monat Mai 僕と同様ロマンチストである佐藤卓史さん、よろしくお願いします。