精神の成熟へ向けて(結語そのニ)

 精神病理学からみた表現によると、人間とは、個的でありながら共同性を併せ持つ、負荷を帯びた存在であるそうです。別の見方では、人間という存在は、人格と社会とのあいだにその理解において、ある危機的なものを孕んでしまう生命体であるといえます。
 その危機を乗り越えられる人が社会に参加して、乗り越えられない人が精神を休めるものと考えられます。ですが、患者は必ず元気に還ってくると、それぞれの家族や友人がゆっくりと待っていると私は信じています。
 私はこれまで、不安神経症、うつ、不眠、社会不安障害、双極性感情障害、統合失調感情障害と、自分の歴史の中で社会との接点を失っていく精神病の旅を歩んできました。私はこれからその歴史と教養をフル活用して、共に苦しむ人々と、当事者の一人として人生をシェアできればと考えています。